記録

幻覚を記録する。

ジーザス・クライスト=スーパースター(2012 UK アリーナ・ツアー版)

日本時間の2020年4月11日早朝3時、なんとジーザス・クライスト=スーパースターが48時間限定で無料公開されます。そう。キリスト最後の七日間を、ユダの裏切りを、最高に尖った解釈で描き出して大問題になったミュージカルです。


Jesus Christ Superstar - FULL STAGE SHOW | The Shows Must Go On - Stay Home #WithMe

キャッツやらオペラ座の怪人やらを作曲した天才アンドリュー・ロイド・ウェバーと、美女と野獣やらライオンキングやらアラジンやらを作曲した天才作詞家ティム・ライスが20代の頃に作ったヤバいミュージカル。

ミュージカルとは言いますが、この作品、上記のどの代表作とも全然違う作品です。

まずロックです。そして感性がめちゃくちゃ尖っている。若いぜ!!!!!!!という感じが凄い。ミュージカルなんてしゃらくさいぜ、ストレートプレイこそ至高だぜ、そんな人も満足させるような熱量と疾走感。そしてミュージカル好きの人はとんでもない衝撃を受け、中毒になること間違い無し。とにかく物凄い作品です。

私が初めてこの戯曲に出会ったのは、社会人一年目のとき。劇団四季エルサレムバージョンを見ました。リアルなエルサレムの荒野を表現したクソシンプルな舞台、全体的に茶色くて全く華やかさの無い衣装、これ本当に四季のミュージカルか?と思いながら見ていたけど、最終的には別の意味でこれ本当に四季のミュージカルか?となった。つかこうへいの舞台を見た感覚に近い。究極に人間臭い登場人物たちのすれ違い、それぞれの思惑、慟哭、そして全てを掌で転がす姿の見えない父なる神の存在。カテコで嗚咽した作品は後にも先にもこれだけでしょう。学生の頃に見ておけば良かったほんとに。

そんなジーザス・クライスト=スーパースター、演出が時と場合によって全然違います。今回無料公開されるアリーナ・ツアー版は、2012年にイギリスでやったやつです。当時のロイド・ウェバーの理想形。アリーナなので舞台セットはライブっぽい。真ん中にでっっっっっかい幅の広い階段、アクティングは全てそこで行われます。そして両サイドにあるタワーではバンドが生演奏。演出はレミゼ新版のローレンス・コナー。全体的にすごいキャッチーな演出です。時の流れに乗る若手IT社長風のジーザスと、ストリート系の弟子たち。ユダヤの司祭たちはいかにも狡そうな大手企業の役員風。裁判官のピラトに、バラエティ司会者のヘロデ。なんかもうこの時点で面白そうじゃ無いですか?ということで、ナンバー紹介をしていきたいと思います。もう900文字ある。

 

1.Overture -序曲-

デモや暴動のニュースが映像として映し出され、ステージでは機動隊と若者たちが争いを始める。そしてスーパースターのメロディーが流れジーザスが登場すると、若者たちは争いをやめ、ジーザスの周りに集まる。この若者たちがジーザスの弟子、機動隊が圧政者の兵隊というわけですね。

曲はもう出だしからめっちゃ格好いい。これから起きる出来事の予兆のような不穏なギター。「テーンテテーンテテーンテテーレレーンテーン」のとこが凄く良い。全体を通して緊張感が凄い。格好いいですね。とにかく聞いてくれ。生バンドって良いなぁ。

 

2.Heaven On There Minds -彼らの心は天国に-

ドレッドヘアーのユダが登場。ティム・ミンチン、高音がスコーーーーンと出るので非常に気持ち良いですね。

どうか俺の話を聞いてくれ。このまま行けば破滅しかない。田舎で親父の家業をついで大工をしてればよかったのに。これじゃやりすぎだ。俺の話を聞いてくれジーザス。あいつらは何も分かってないんだ。それなのにあいつらの言う事を信じるのか。いつもお前の傍にいたのは俺じゃないか。

救世主として祀り上げられるジーザスを心配するユダと、一切彼の話を聞こうとしないジーザス。まぁジーザスは人類の原罪を背負って十字架にかかるためにエルサレムに行くつもりなので、ユダの警告を聞かないのは当然なんですよね。ついユダに対して「お前もういいから」みたいな顔をついしたくなるのも分かる。ジーザスを【一人の青年】として描いている作品ではあるんだけど、一方で聖書を描いている以上ジーザスは【神の子】なのでこの時点で当然自分の運命は知っているんですね。つらい。

 

3.What's The Buzz/Strange Thing Mystifying -何が起こるのか教え給え / 不思議な出来事-

これから何が起きるのか知りたがって騒ぐ弟子たち。めっちゃジーザスの動画やら写真やらを撮ってSNSにアップしまくっててすごいけどいつの時代もこういう根性って多分変わらないよね。「そんなこと知ってどうするんだ、言えるもんなら言いたいけど、言ったところでどうせ分からないだろ」と突き放すジーザス。そらそうなるよ。(精神的に)普通の人間がこれから自分が十字架にかかって死ぬって知ってたらそうなる。そんなジーザスの苦悩の中身までは分からないけど、とにかく病んでいるのを察して濡らしたタオルで顔などを拭いてくれるド派手メイクの革ジャンのマリア。周囲の人たちに対して「あーあ、彼女だけだよ俺が必要としてるものを与えようと頑張ってくれるのはよ」と当てつけのように言うジーザス。でもみんな全然聞いてないね。

 

と思ったら一人刺さって奴がいた。そう、ユダです。すっげー見てる。そしてわざと茶化すように「その女といちゃついてんのは楽しいんだろうけど、お前に相応しくないよ。言動不一致だし。俺たちいつ逮捕されてもおかしくないんだからいい加減にしてくれよ」と割って入る。革ジャンのマリアはマグダラのマリアなので元娼婦だったわけですね。ここでジーザス「お前はどれだけ偉いんだ、余計なこと言ってないで今すぐこの人から離れろ」と一度目のキレ。「罪のないものだけが石を投げろ」という有名なフレーズも出てきます。流石に気圧されるユダ。そしてそのまま弟子たちにもキレるジーザス。「お前らもいい加減にしろよマジで、どうせ俺がいなくなったって誰も気にしないんだろ」と。「そんなことないっす!そんなことないっす!」とうろたえ自己弁護する弟子たちに対して更に「お前ら誰も分かってないんだよ!!!!!!」とブチ切れるジーザス。もう見ていられない。

 

4.Everything's Alright -今宵安らかに-

ベタニアのマリアマグダラのマリアが同一視されているパターンですね。

あまりにも荒れているジーザスに、「大丈夫。心配しないで、とにかく休んで」と語りかけながら高級品である香油を贅沢使いしてマッサージを施す革ジャンのマリア。ジーザスもこれには思わずうっとり。ところがユダがマリアに突っかかってくる。「そんな高いもんジャンジャン使いやがって、その金で貧しい人たちを救うことだってできるのに、何やってんだ」と。マリアに突っかかってるけど、本当はジーザスに対して言ってるわけですね。最終的にゼロ距離に。ユダをガン無視してジーザスとの間に割って入るマリア。でもジーザスはスルーできない。だって親友だったんだもの。分かってもうことはできないけど、分かってもらえないのは悲しい。「そんなもので貧しい人たちを本当に救えるわけないだろ。私がお前のもとにいる間に考えるんだな。私が消えればお前は何も分からなくなり、後悔するぞ」と二度目のキレ。ユダが裏切ることは分かっている。それでも言わずにいられない。もうジーザスもユダも泣きそうな顔をしている。そして去ってしまうユダ。神、許せない。

 

5.This Jesus Must Die -ジーザスは死すべし-

 場面変わって急に出てくる高そうなスーツを着たしぶいおじさん。こういうビジュアルのおじさんが好きな人絶対いる。このおじさん達がだれかというと、カヤパ、アンナスをはじめとしたエルサレムを支配しているユダヤの司祭たちです。圧政を敷いて利益をむさぼっている人たちですね。新しい教えを説いて救世主と祀り上げられ、Youtube的な何かでも大人気なジーザスの様子を見て、自分たちにとって邪魔だと思うわけです。だから殺しちまえと。格好は現代風なんだけど、あくまでも聖書のお話なので、発想はだいぶアレです。

こんなシーンなのに聞いててなんか楽しくなるメロディーライン。みんなで一緒に歌おう。

 

6.Hosanna -ホサナ-

ホサナとは神をたたえる言葉だそうです。

キリストを囲んで「救世主!スーパースター!」とフラッグやらプラカードやら持って大盛り上がりの弟子と民衆。THE TWELVEの看板面白すぎるだろ。高そうなスーツを着たカヤパ、ジーザスに対して「こいつらを静かにさせろ。このままだと暴動になるぞ。こいつらは間違ったことをしているのだと教えてやれ」と言いますが、ジーザスは聞きません。「この歌は止めようがない。神の御国は実現されるのだ、みんな歌え!」とカメラに向かって挑発をかまします。とても貴重な元気なジーザス。

これもみんなで歌える歌なのでみんなで歌おう。

 

7.Simon Zealotes / Poor Jerusalem -狂信者シモン-/哀れなエルサレム-

ダウナー系狂信者シモン。弟子のひとりです。歌すっげぇうまい。

なんと素晴らしいお方!ローマの支配から我々を救ってくださる!ここにいる5万人すべて、あなたのために何でもいたします!信仰に少しだけローマへの憎しみを足せば、あなたの力はより強大になるでしょう!

なんでマリアも踊っとんねん。楽しそうだったからかな。

これもみんなで歌うと楽しいからみんなで歌おう。

 

でもジーザスが言いたいのはということじゃないだよね。キリスト教における【救い】というのはそういうものじゃないんですよ。だから表情が暗くなってしまう。結局誰も自分の教えを本当に理解する人はいない。「力とは何なのか、栄光とは何なのか、誰も分かっていない。なんて哀れなんだろう」と。それでも手を伸ばされれば握ってあげる。優しい。

 

8.Pilate's Dream -ピラトの夢-

優し気で小綺麗なおじさん登場。さっきのユダヤ司祭たちとは雰囲気がだいぶ違うけど、なぜかアンナスが身支度を整えてくれている。そして最後にカツラをつけたところで彼の職業が裁判官であると分かります。そう、彼がキリストに磔刑を言い渡すことになるピラトですね。彼がある夢を見たと語る場面です。

ある男に会った。男は忘れられないほどに追いつめられた表情をしていた。どうしたのかと聞くが何も答えない。その次に、彼を激しく憎む人々に会った。そして最後に、何億もの人々が彼のために泣いていた。そして人々は私の名を呼び、責めていた。

いわゆる予知夢というやつなんだけど、なんか変な夢だよね(笑)という感じで仕事に向かいます。お前、大変なことになるぞこの後。

 

9.The Temple -ジーザスの神殿-

THE TEMPLE(寺院) 、もはや完全にそういう名前のクラブになっている。祈りの場がクラブに。中に入ったジーザスは驚き、戸惑い、そして3度目のキレ。なかなか衝撃的なキレを見せるのでぜひ見てほしい。ちなみにユダは入口でなぜか入場拒否されています。ジーザスがこれ見たらまずいことになると分かっててついてきたんだろうに、可哀相。

場面変わって病人に取り囲まれ、治してくれと頼まれるジーザス。最初は一人ずつ手を握ってあげるんだけど、どんどん人が増えて、取り囲まれて、どうしようもなくなってしまう。ここの叫びが悲痛。そして最終的に「自分で治せ!!!!!」と言ってしまう。4度目のキレ。すがってきた人たちからしたら「なんやねんこいつ」となってしまう。あるよね、こういうこと。悲しい。

 

10.I Don't Know How to Love Him -私はイエスが分からない-

余計なことを言わずただただジーザスを愛してくれるマリア。姐さん感がすごい。よかったねマリアがいてくれて本当に。ジーザスはマリアだけが私のことを大切にしてくれていると言うけれど、マリアはどうしてあげたら良いのか分からずめちゃくちゃ思い悩んでいるわけです。それが愛なんだね。

どうやって彼を愛したら良いんだろう。今までの私とは全然変わってしまった。一体何がそこまで私の心を動かすんだろう。彼はただ一人の人間に過ぎないのに。いつも冷静だった私が、こんな風に誰かのことを想うだなんて。だけどもし彼も私のことを愛しているなんて言ったら、私は顔をそむけて、逃げてしまうかもしれない。それほど愛してる。

ジーザスを一人の人間として見ているのはマリアとユダだけなんですよね。マリアは自分の無力さを分かっていて、それでもしてあげられることを精いっぱいしていた。一方ユダは……

 

11.Damned for All Time / Blood Money -裏切り-

ここを間違えると全然意味が分からない話になっちゃうんですが、この戯曲の中のユダはジーザスを殺すつもりは全くありません。むしろ殺されないようにするために裏切るんですよ。これ以上騒ぎが大きくなったらいよいよアウトだ、今のうちに逮捕されておけば特に処分もされずそのうち放免されるだろう。そんな考えからジーザスの情報をカヤパ達ユダヤの司祭たちに教えてしまう。ところがユダヤの司祭たちはもうとっくにジーザスを殺す気満々なんですわ。結局リアリストに見えたユダも考えが甘いわけです。でもジーザスを想う気持ちだけは本物なんですよね。

俺だってこんなことしたくない。だけどあいつ自身ではもうどうしようもないんだ。だから俺がここに来た。金なんていらない。ここに来るしかなかったんだ。どうか俺が呪われているなんて言わないでくれ。

一人で悩みに悩んだ末の裏切り。そして無罪放免を信じていたとしても、裏切りは裏切り。追いつめられたユダの様子が痛々しい。

大人はずるいですね。「とにかく情報さえくれればいいんだ。そうしたら報酬を払う。我々は法律に則るだけだ」と。ユダはそんな血濡れた金なんていらないと言って受け取らないけれど、「お前の気持ちは分かるが、手数料は受け取るべきだ。この金があれば貧しい人も救えるだろう」と袋に入った銀貨を地面に落として去っていく。人を何だと思ってんだ。でもつい金を手に取ってしまうユダ。ここで聞こえてくる幻聴も限界感があって悲しい。どいつもこいつも孤独だ。

 

12.The Last Supper -最後の晩餐-

一日の終わりにのんきに語り合う弟子たち。「引退するときには福音書でも書いて有名になろう」とか。なんとか笑顔を保っていたジーザスだが、裏切りを果たして帰ってきたユダの姿を見て耐えきれなくなってしまう。その運命を知っていて、そうしなければいけないことも知っているけれど、それでも耐えられない。「お前達もどうせ私が死んだってすぐに忘れてしまう。お前達のうち一人は私を他人だと言う。それはお前だペテロ」5度目のキレ。突然の名指しにうろたえまくる弟子たち。

更に「そしてお前達の中の一人は私を裏切る」と畳みかけるジーザス。「小芝居はやめろ。誰だか知ってるくせに」とユダ。「なぜ行かない」「お前が俺に裏切らせたんだ」「早く行け」「どうして俺がこんなことをしたのか、お前は分かってくれるだろ」「そんなことどうでもいい」「お前に憧れてたのに、こんな奴だったなんて」「この裏切り者め」「お前がそれを望んだんだろう」「さっさと行け。お前の話なんて聞きたくない」「お前は哀れな奴だ。お前のせいで俺たちの理想は死んだんだ。だけど一番悲しいのは誰かがお前を売り渡さなければいけないってことだ」「早く行け。彼らはお前を待っているぞ」「お前がもっときちんと計画していれば、こんなことにはならなかったんじゃないのか。こんな悲しいことにならなかったんじゃないのか」

このやりとりの間、ジーザスとユダはほとんど視線を合わせない。ジーザスがユダを見ているときはユダはジーザスを見ていないし、ユダがジーザスを見ているときはジーザスはユダを見ていない。このすれ違いが悲しい。ジーザスは十字架にかかって死ぬために親友であったユダに裏切られなければいけない。ユダはまさかジーザスがそんな想いでいることも、ジーザスがこれから死ぬなんてことも知らない。分かりあいたいのに、分かりあうことは許されない。弟子たちののんきな歌詞のコーラスが平和だった過去を思い起こさせる。悲しくて激しくて美しいシーン。

 

13.Gethsemane -ゲッセマネの園-

あんだけのことがあって普通に寝られる弟子たちすごいなマジで。ジーザスの呼びかけに誰も反応しない。ジーザスこれから死ぬんだぞお前ら。

ゲッセマネの園で一人祈るジーザス。

神よ、最初はあなたのことを信じていましたが、今は自信がありません。この3年を30年間に感じるほどに、私はあなたのため働いてきました。なぜ私は死ななければいけないのでしょう。どうか教えてください。私の死は本当に意味があるものなのでしょうか。私にはもう分からない。あなたの望みは厳しすぎる。私の気が変わらないうちに、早く私を殺してください。

ジーザスの内面が初めて観客にむき出しになるシーン。絶唱。ベン・フォースターのハイトーンがものすごい。

 

14.The Arrest -逮捕-

兵隊(警察)たちに誰がジーザスかを伝えるためユダが口づけする有名なシーン。去ろうとするユダを引き留めてジーザスが抱擁する。このタイミングになってようやくユダに自分の本心を開示できるジーザスの悲しさよ。

今更起きてきて焦る弟子。なんなんだお前らほんとに。でも人生ってそういう感じだよね。分かるよ。

そしてジーザスが逮捕されるやいなや手の平返して煽りまくるマスコミ。こういうときのマスコミってほんとやだなって思いますね。

ジーザスをなんとか有罪にしてやろうとするカヤパとアンナス。「感謝するぞユダ。もうすぐジーザスの血が見られるだろう」司祭たちをにらみつけるジーザス。一瞬だけ映るユダの絶望しきった表情。本当に親友だったんだなこの二人、というのが分かって辛い。

 

15.Peter's Denial -ペテロの否認-

「お前は私のことを三回も知らないと言う」と名指しされたペテロ、マジで三回知らないと言って、マリアに責められる。しょうもなさすぎる。でも人生ってそういう感じだよね。分かるよ。

 

16.Pilate And Christ -ピラトとキリスト-

法廷の外でジーザスに出合うピラト。なかなか衝撃的な恰好をしているのでぜひ見てほしい。面倒事の空気を感じ取ったのか、筋トレしながら「お前はローマ人じゃないんだからここで裁く必要はない。ヘロデ王のところへ行ってこい」と流す。いいのかそれで。

 

17.King Herod's Song -ヘロデ王の歌-

人気バラエティ番組の司会者、ヘロデ王。視聴者投票でジーザスが神の子か詐欺師か決めちゃお。近頃うわさの”神の子”がゲストとあって、水の上歩いてみろとか水をワインに変えてみろとか色々言うわけですが、ジーザスはずっと不機嫌な顔で無言を貫き通します。なんならヘロデ王が水をワインに帰るし水の上歩くしバク転もする(しない)。ぜひ見てほしい。結局、こんなつまらないやついらない、とジーザスをピラトのところに付き返します。

 

18.Could We Start Again, Please? -やり直すことはできないのですか-

ジーザスへの想いを歌うマリアとペテロ。

こんなはずじゃなかったのに。どうしたらよいのでしょう。やり直すことはできないのでしょうか。

綺麗なメロディがむなしい。

 

19.Judas' Death -ユダの死-

ユダヤの司祭たちのところへ殴り込むユダ。カヤパがめっちゃ出血する。

ジーザスをあんな目に合わせるなんて、あまりにも酷い。もう死にかけているじゃないか。そして責められるのは俺一人なんだ。あいつは俺がなぜ裏切ったのか、きっと分かっていない。俺を恨むだろう。ただ救いたかっただけなのに。

あまりにもかわいそうなユダ。劇中楽しい瞬間とか心休まる瞬間とか一瞬たりともない。「言い訳なんてするな。民衆はあいつを裏切った。お前は正しいことをした。そして報酬も手にしたんだ。割の良い仕事だったじゃないか」と追い打ちをかけるアンナスとカヤパ。アンナスすげぇ蹴るしユダは泣いてる。

あいつのためなら国を売ったっていい。俺は無罪のあいつの血を浴びてしまった。

ここから「I Don't Know How to Love Him」のリプライズが入るのが凄く切ない。

あいつを愛していたのに。あいつはただの人間だ。王様じゃない。他の奴らと同じ人間なんだ。あいつが死んだら俺はどうしたらいい。あいつも俺を愛していただろうか。あいつも俺のことを考えていてくれただろうか。

ジーザスは分かってるよユダ。全部分かってるけど、分かっちゃいけなかったんだよ。そしてユダは自分が神の計画に利用されていたことに気付き、なぜ自分にこんなことをさせたのかと言いながら死を選びます。最後にジーザスの名前を呼ぶパターンはこのアリーナツアー版でしか見たこと無いんだけど、すごく悲しい。

 

20.Trial Before Pilate -ピラトの裁判-

この辺になるとリプライズもいっぱい出てきてすごい音楽的にも盛り上がりますね。

やっと仕事をするピラト。確かにジーザスの言っていることは妙だが別に罪を犯したわけでは無い。それなのにユダヤの司祭たちはジーザスを死刑にしろと言う。そしてフェンスの向こうでは、つい先日までジーザスを王とたたえていた民衆までもが「こいつを十字架にかけるのが皇帝のためだ!」と叫ぶ。「偽善者どもめ。今まで皇帝のためなんて言葉聞いたこともない。なぜこんな普通の男をそこまで憎む。何の罪も無いただの人間だ」しかし熱狂した民衆にピラトの言葉は届かない。結局民衆の気を収めるために鞭打ちをすることに。このときのジーザスの叫びの悲痛さが凄い。数えるピラトもめちゃくちゃ辛そう。いい人なんだこのおじさんは。初めてJCS見たとき一番好きになったキャラクターでした。

「答えてくれジーザス。お前を生かすも殺すもお前の返答次第なんだ。私はお前を助けてやれる」「あなたの力なんて、運命を変えるには遠く及ばない」

早くジーザスを十字架にかけるよう騒ぎ続ける民衆。このもう半ば暴徒化してしまっている。

「愚かな奴だ!私はもう関係ない。死にたいなら死ぬがいい。哀れな操り人形め」ジーザスを救いたいのに、見切りをつけなければいけないピラトが悲しい。

ユダにしろピラトにしろ、神のせいでどんどん罪人が増えるシステム。

 

21.Superstar -スーパースター-

このミュージカルの中で一番有名な曲でしょう。

いよいよ磔にされるというジーザス。のところに現れるエンジェルズとダンサーズとコーラスを引き連れたユダ。

俺はよく分からないんだ。もっと上手くやれたはずだろう。俺はただ知りたいだけなんだ。悪気があって言ってるんじゃないんだよ。お前の酷い死に様について、お前はどこまで知ってたんだ。誤解しないでくれ。ただ知りたいだけなんだ。

このユダがジーザスの見ている幻覚なのか、幽霊的な何かなのか明言はされてないんですが、とにかくもう死んでるのでノリノリです。全てから解放されている。タンバリンとか叩いてるし。

ブラスアレンジがめちゃくちゃ良いのでぜひ聞いてください。

 

22.The Crucifixion -磔-

23. John Nineteen Forty-Oneヨハネ伝・第19章41節

こっから歌無し。現代音楽っぽいようなジャズっぽいような音楽をBGMにして、磔にされたジーザスの悲痛な叫びがこだまします。聞いてて本当につらい。駄目な人は駄目かもしれない。お母さん呼ぶとことか。絶命したあとは真っ赤な照明と花弁が舞い散る中、十字架から降ろされ、WSSとかでもお馴染みの担がれ方で退場していきます。現地の前方で見ていたら多分マリアの泣く声とか聞こえたんだろうな。最後は弟子たちが勢ぞろいし、背後のスクリーンにジーザスの教えが書かれたと思しき張り紙が映し出される。ジーザスの死は無駄じゃなかった、ということなんだと思う。

 

あとはカーテンコールがジーザスの復活を表しているという説もあるし、劇中で復活しないのはジーザスが人間であったというのを強調する意図があるという説もあったり、色々あります。奥深い。

落ち着いて真面目に見ても面白いし、ノリノリで縦揺れしながら見ても面白い。みんな見てくれ。そしてジーザスとマリアが結婚してユダが小うるさい近所のお兄さんしてる本とか書いてくれ。