記録

主に観劇の記録。

水月鏡花 -竜馬夢双-(LIPS*S)

6/10(土)ソワレ月組、6/11(日)マチネ月組


【会場】BIG TREE THATER(池袋駅)

【あらすじ】※公式HPより引用
世を動かしたのは、 天の意志か、人の意志か―。
江戸末期。
黒船来航により動乱の時代を迎えた日本で、
その暗雲を切り裂き、新たな時代を作った男がいた。
その男の名は「才谷梅太郎」、またの名を「坂本竜馬」。
幕末の英雄として誰もが知る坂本竜馬を、
LIPS*Sが新しい切り口で描く和風歴史ファンタジー。

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【個人メモ用あらすじ】
黒船が来航して日本がヤバいと思った才谷梅太郎(坂本竜馬)は幼い頃に見た竜に助けを求める。
竜は日本を守り切った暁にはお前を喰わせろと要求。
梅太郎は、どうしても守りたいものがあるからとそれを受け入れる。
一方、竜にも成し遂げたいことがあった。
千年前に殺され、今は人間の女性に転生しているであろう同胞を探すこと。
かくして竜は人間に転生し、二人の坂本竜馬が誕生したのだった。
あとは大体史実と一緒。


【感想】※意見には個人差があります。
ぶっちゃけ、幕末が苦手でした。
天下取ればいい単純な時代の方が好きでした。
新政府の奴らなんて大嫌いでした。
そんな私を変えてくれたLIPS*S 。
思えば昨年も西洋史・西洋文学アレルギーの私を変えてくれました。
ありがとうございました。
やっぱり吉田さんの演出ではLIPS*Sの公演が一番好きです。
熱い。人間臭い。ケレン味が強い。
竜馬が斬られたときの真っ青な照明は、『Knights』のトリスタンの横一閃並みに「おおおおお!!!」と思いました。
そして梅酒が好きだなの松井さんの付ける殺陣のスピード感。そしてその殺陣に付いてくる殺陣オペの小阪さん。
アンサンブルさん達による乱戦も、新撰組と竜馬の斬り合いも、最高に格好よかったです。


以下、役・キャスト別の感想です。公式HPに載ってる順。敬称略。
花組もチケット取っておけばよかった……


坂本竜馬/中谷智昭
うしおととらで言ったら、とら。
出番も多いし癖も強いし見得も切るのに、自分だけが圧倒的に輝くのではなく、むしろ周囲の方たちのキャラクター性をより一層輝かせるような不思議な役でした。
竜馬と関わる場面では、みんな生き生きして魅力的に見える。
だから、なぜかあまり死んだ気がしません。光を受けた人達がちゃんと生きてるから。
さすが座長。これぞ主演。
今まではどちらかというと周囲から受け取ったものを何倍にもして輝くイメージでしたが、今回の舞台では完全に光源でした。


楢崎龍/根岸愛
麻子と真由子で言ったら、足して二で割って設定に真由子成分、性格に麻子成分を多くした方。
キャスト発表された時点ではアイドルの方がいることは覚えてたんですが、実際観劇する頃には忘れてました。
終演後、お龍さんの芝居全てが自然でよかったなと思ってキャスト表開いてひっくり返りました。
叫ぶ芝居が様になる逸材です。
京都弁がすごく上手く聞こえたので、もしやそっちの方の出身なのかと思ったら、全然毛呂山町出身で再びひっくり返りました。


千葉さな子/八坂沙織
麻子と真由子で言ったら、足して二で割って設定に麻子成分、性格に真由子成分を強くした方。
とにかくかわいい。かわいいとしか言いようがない。かわいい。かわいい~。語彙力を失うかわいさ。
「私のことなんて気にしてる場合?」って。気にしたくなっちゃうよ。
こんな子いてほしい。勝さんの気持ちがよく分かります。
最後、梅太郎からの手紙を受け取ったときの笑顔が最高でした。
もう絶対幸せになってほしい。


沖田総司/坂口和也
ランスロットのときも思ってたんですが、なぜこんな不思議ちゃんオーラが出るんでしょうか。
こんな成人男性他にいるでしょうか。
無理に不思議ちゃんを作り込んで「うわ」って感じになったり、ドラマ性が消えてしまったりしている人をよく見ますが、坂口さんは本当に凄い。
そしてこういう使い方をしている吉田さんも本当に凄い。
ただの変な人じゃなくて、何を考えているのか、何を想っているのかちゃんと伝わる。
ただの殺人鬼じゃない、純粋さとコンプレックスと仲間への強い愛情を併せ持った魅力的な沖田でした。
土曜ソワレの鳩のくだりが、新撰組への愛に溢れてて大好きでした。


才谷梅太郎/佐藤弘樹
うしおととらで言ったら、うしお。
この癖のなさ。真っ直ぐさ。主人公感たるや。
どんどん成長していく姿が眩しい。私もこんな風に生きたい。
そしてダンス。圧倒的に綺麗。こいつ本当にあの梅太郎なのかと疑うぐらい美しい。
見ている人誰もが味方になりたくなるような、そんな存在でした。


中岡慎太郎/松田裕
真面目で常識人で頭のいい優男の中岡さん。
世の中のありとあらゆる職場に一人ずついてほしい。
薩長同盟がダメになりそうなとき真っ先に頭を下げ必死に引き留める場面、本当に格好よかった。
近江屋で光枝ちゃんの肩に触れてドキドキするところが可愛かった。
なのにあそこで死んでしまうのが本当に悲しくて悲しくて。二回目の観劇ではひたすら中岡さんと光枝ちゃんを見てました。
物語に深みを与える存在でした。


勝海舟/井上貴々
Twitterに流れてくる感想を見て「勝さんが面白いってどういうことだよ……」と思っていたんですが、びっくりでした。
こういう役は一歩間違えるとただウザいだけになって舞台をぶち壊しかねないと思うんですが、完璧なバランス感覚でした。
ふざけるところの可愛さとキメるところの格好よさのギャップ。
終盤のシリアスな場面でネタをぶっ込むところとか、本当にバランス感覚が凄かったです。
井上さんの持つ客観性の成せる業だなと思いました。


土方歳三/風間庸平
鬼の副長と呼ばれてはいるけど、基本的には面倒見の良い男前。
バラガキと呼ばれていた頃が想像できる一方で、その冷静さからこれまでに歩んだ道のりを感じられる土方でした。
とにかく仲間が大事で、だからこそ規律を破る奴は許す訳にはいかない人。
沖田に「新撰組やめるか?」と聞く場面は、水月鏡花の土方でなければ絶対に無い場面だと思います。
せっかく掴みかけた居場所が無くなってしまうことを察しながらも、前に進もうとする直向きさが胸に刺さる。
こんな人間臭くて仲間が大好きな人が一人きりで五稜郭で戦うのかと思うと本当に悲しくて、昨日からたまに思い出しては泣いてます。


西郷隆盛/河合国広
日本史で勉強したときあまり好きになれなかった人物その1。
出た瞬間「西郷隆盛くっそイケメンになった」と思いました。
自分の藩の利益を第一に考えるのは、それだけ民が大事だから。弱いものを守るためにはどんな手も使う。
一番人間臭い人かもしれない。
綺麗事だけでは生きていけない、を体現していた人。でもそれを貫き通す強さは並みの人間ではありませんでした。
なのに小ネタが面白すぎてずるい。


坂本乙女/木内海美
『Knights』のときからずっとおかんと思ってました。
非の打ち所の無い立派なお姉さん。
この人が梅太郎を真っ直ぐに思ってくれたから、梅太郎はあんなに真っ直ぐ育ったんだろう。
亀弥太が死んだと知るシーンでも梅太郎を責めず、悲しみに取り乱す紫瀾ちゃんをしっかりと受け止めてあげる強さ。
「選べたらいいのにね」という言葉には、現実を理解し受け止めつつも、本当は自分も梅太郎のためにもっと何かしてあげたいという想いが滲み出ていました。
たすき掛け好きです。


桂小五郎/齋藤雅樹
日本史で勉強したときあまり好きになれなかった人物その2。
今回の舞台でイメージが180度変わりました。
流石に史実では地蔵マスクで腹話術をしたりはしていないと思いますが、桂にもこんな日常があったんだろうなと。
悔しくて悔しくて泣いたこともあったんだろうなと。
亀弥太を見殺しにしたとき、竜馬の「大馬鹿者」という言葉を真っ正面から受け止めるように立ち上がったのが印象的でした。
なのに小ネタが面白すぎてずるい。


坂崎紫蘭/皐月梨早
狂言回しだけど、ただの狂言回しじゃない。
本の作者としての客観性を持ちつつ、当事者としての意識を滲ませなければいけないとても難しい役どころだったと思います。
坂崎紫瀾ではない坂崎紫蘭、どうやって作り上げたのかとても気になります。
なぜ自分は戦えないのかと泣いていた幼い紫蘭ちゃんが、自分の武器を見つけ、沢山の物事を見聞きし、経験し、成長した姿の凛々しいこと。
最後の切実な問いかけに対しては、頑張りますとしか答えられないです。頑張ります。


望月亀弥太/鳥谷部城
『Knights』のときも思いましたが、死ぬのが本当に上手い。
美味しい役を何倍にも美味しく調理する力があります。持ってます。
二回目の観劇のときは出てきただけで泣きました。
一つ一つの動きが全力で、一体どれだけ考えてどれだけ作り込んだらこうなるんだろうと。
亀弥太、なんというか、出会えてよかったなと思える役でした。
沢山の志士達に人に惜しまれたのも納得。
好感度ランキング作ったら一位になりそう。


楢崎光枝/波崎彩音
中岡さんが死んでしまった場面が物凄くて。本当に物凄くて。
サイレントで演技しているのに全て聞こえてくるようでした。
必死に呼び掛ける姿、すがり付いて泣く姿、今思い出しても胸が苦しいです。
そして大政奉還が成功したと知った瞬間のあの表情。
愛する人が心から望んでいたことが成し遂げられたのに、それを伝えることができない悲しさが溢れていて、私も号泣でした。
中岡さんが生き返って二人で平和な一時を過ごすだけの番外編とかありませんか。そうですか。


佐々木只三郎/真下祐一
前回拝見した『Knights』に引き続き、ハングリー精神溢れる役でした。
声がめちゃくちゃ良い。声が良くないと、ここまでの威圧感は出ない。適役です。
一番幕府を守りたいと考えていたのは間違いなくこの人。志とか夢とかじゃなくて、「絶対負けない」という意地が見えました。東北人の頑固さが出てた。
今回は殺陣が少なかったのがちょっと残念。もっと見たかったです。


月照/矢花イサハル
史実と全く違う新しい月照。180度違うと言ってもいいくらい。
そして、この舞台の中で唯一しがらみに囚われている人。
志を持った西南雄藩とも、夢を持った新撰組とも、意地を持った佐々木とも違う。
自分の意思と関係なく竜を殺して先祖代々の恨みを晴らすためだけに生きてきた、この舞台のアンチテーゼ。
ずっと奴隷扱いされてきた原因が全部先祖の自作自演だと知ったら、そりゃああなっちゃうよ。受け入れられないよ。
「なぜお前は持っているんだ」という台詞、とても小さい声だったのに耳に残りました。
彼がちゃんと自分の足で歩けますように。


アンサンブルの皆さん
場転のスピード感、台詞の熱量、素晴らしかったです。
船上のシーンで後ろで踊ってるのが可愛くて思わず笑顔になってしまいました。
殺陣も本当によかった。
女性の殺陣ってパタパタして気になってしまう事が多いんですが、
紅一点の佐内瑠奈がしっかり地に足着いた殺陣をしていてよかったです。
アンサンブルって舞台に説得力を持たせるために本当に大切な存在で、今回のアンサンブルさん達はしっかりとその役割を果たしていたと思います。